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2017年9月14日トピックス

技術者インタビューシリーズ 第3回 加藤光氏

バイオマス発電所プロジェクト/コンストラクション・マネジメント

株式会社加藤光都市建築研究所代表・管理建築士・一級建築士

 

“プロジェクト”そのものを“デザイン”──建築の設計・コンサル手掛け

オリンピアの再生可能エネルギー事業には、社内外の技術専門家チームが携わり、信頼性と確実性の高い発電設備設計に取り組んでいます。オリンピアがファイナンスとコンストラクションに関するマネジメントを務めたメガソーラー発電所の開発に携わり、同社のバイオマス発電所プロジェクトでも敷地造成や建築に関するコンストラクション・マネジメントを行っている一級建築士・加藤光氏に、これまでの経歴や同プロジェクトについてお話を伺いました。

 

 

 

 

設計監理者として経験重ね 企画参加の思い膨らむ 

──お仕事の経歴と専門分野について教えてください

私が代表を務める株式会社加藤光都市建築研究所はこれまで、集合住宅及び商業施設の設計や造成計画と建築に関わるコンサルティング業務を柱としてきました。更にこの数年はオリンピア様との御縁で再生可能エネルギー施設のCM(コンストラクション・マネジメント)も担当させていただいております。

弊社設立前の私は、大学の建築学科を卒業後、まずアトリエ系の設計事務所で設計の仕事を始めました。この設計事務所の所長は建築家の坂倉準三に師事した人で、設計の内容や図面の描き方はもとより、お茶の入れ方まで厳しかったですね。20代半ばで一級建築士の資格を取得してからは、担当者として一つの建築を全て任されるようになりました。

──仕事を任されるようになって、現場で経験したことは何ですか

事務所のスタッフは少人数の小さな所帯だったので、とにかく何でもしなければならない。建設地の調査、クライアントとの打ち合わせ、行政との協議、そして夕方になってからやっと図面の作成を始めるわけです。ですから、事務所に泊まり込むことも珍しくありませんでしたが、全く苦にならなかったですね。

そして、行政への申請やゼネコンとのコスト調整が終わって、やっと工事が始まるわけですが、ここからが肝心です。それまで図面という二次元の世界に描かれていた線の集積が、リアルに立ち上がっていくわけですから、設計者であり工事監理者でもある私には決定事項が無数にあって毎日が決断の連続です。現場で一番コミュニケーションをとるのは、やはり建設会社の現場監督ですが、現場はあらゆる職人から成り立っています。鉄筋・型枠・左官・石・タイル工や大工…。素直な気持ちで教えを乞うと、丁寧に教えてくれるもので多くを学びました。

この設計事務所では、戸建住宅から始まり、集合住宅・オフィスビル・ホテルなどを手掛け、建築の一切をまとめ上げる経験を積みました。

──そして、次第に「企画」から参加したいと思うようになったわけですね

はい。一般に設計事務所は、あるプログラムをクライアントから与えられて、その要求を満たすべく設計を進めるわけですが、やがて設計の前段階のプログラムというか企画にも関わりたいという思いが強くなりました。

そして大手流通グループに入社して、商業施設などの企画にも携わりました。ここでも設計から工事監理まで一貫して行いましたので、より仕事の幅が広がりました。混沌とした状態から1つのプロジェクトをまとめ上げる良い経験をしました。

──その後、株式会社加藤光都市建築研究所を設立されました

弊社を設立して、冒頭でお話ししたように建築の設計が主ですが、国の施設のFM(ファシリティ・マネジメント)や出版物の編纂の協力もしましたし、博覧会の企画協力など設計以外の仕事も行ってきました。一見異質な仕事でも、相互にフィードバックされる場合があるのが面白いですね。

そして、設計をしていても単に建築のデザインをするだけではなく、プロジェクトそのものをデザインしようという意識で臨んでいます。

 

「建築」、人の力の結集で完成──条件厳しさ、プラン工夫で快適に

──加藤先生が最も思い出に残るお仕事について教えてください

建築は立場も職種も異なる多くの人たちの力の結集で完成するものです。ですから、完成した建築そのものの記憶は勿論ですが、関わった人たちも混然一体となって残っている記憶は多々あります。

オリンピアのウェブサイトには、私が担当した3つの集合住宅を掲載していただいています。設計コンセプトが掲載されているものもありますが、そこに書かれていないことを竣工順にお話しします。

 ① ルモーデ白金台

まず、”ルモーデ白金台”ですが、敷地は角地に位置して、隣地には国指定の文化財である三菱電機の高輪荘があります。また、国道1号線を挟んで明治学院大学のキャンパスがあって、緑と共にヴォーリズが設計したチャペルをはじめ、歴史的建造物があります。

角地に建つ建築のデザインはアイコニックなものをよく目にしますが、ここでは周囲の環境に対峙するのではなく、柔らかい外皮をまとったヴォリュームで構成しようと考えました。写真では分かりにくいのですが外皮としてのバルコニーのガラスの手摺には、細かい網目状のセラミック印刷を施しました。半透明の柔らかい外皮は周囲の環境を受け止めて、夜には住戸からの照明が拡散して建物全体が行灯のようになります。

 

 ② トリアーデ大岡山

次に”トリアーデ大岡山”は、閑静な住宅街にありますが、敷地形状は三角形で北側斜面、そして高低差は最大7.8mもあって、好条件とは言い難い敷地です。

写真と共に掲載されている設計コンセプトにあるPermeability(パーミアビリティ)というワードは、「浸透性」の他に実はもう1つの意味があって、都市計画論でいう快適な街路を導入するということです。ここでは、住棟を分割して生まれたパティオを中心にサーキュレーションできるように、街路に見立てた屋外廊下を巡らせました。

そして、北向きのフラットタイプの住戸が最多戸数にならざるを得ませんが、水回りを全て片側に寄せて室内には廊下のないワンルームにしました。このプランによって南側のパティオからも採光が可能になっています。

敷地条件が厳しくてもプランの工夫によって、快適な住空間が得られる好例だと思っています。

 

 ③ ルモーデセンター北

最後に、”ルモーデセンター北”は、横浜市の港北ニュータウンにあります。ここは日本では例がなかったほどの大規模な区画整理事業が行われて、建物の絶対高さは20mに定められて均質な街区が広がっています。

この建築に求められたプログラムは、立体駐車場・テナント空間・事務所・集合住宅です。それぞれ、異質な空間をどのようにまとめるかがテーマの1つでした。敷地の間口は32m以上あって、単純に均質なヴォリュームを積み重ねると、ヒューマンスケールを逸脱した街区になってしまうので、それは避けようと考えました。

そこで、最も大きな住戸のヴォリュームを分節して、それぞれのヴォリュームに異なる表情を付与しました。そして、「建物の絶対高さは20m」という画一的な制度に対して、ややアイロニカルな意味も込めて、高さ20mの位置に大きな庇を掛けて住戸を分節した多様な表情のヴォリュームを並置しました。

一般に設計の手がかりとして、敷地とその周辺の環境やゲニウス・ロキ(土地柄)をレファレンスすることが多いのですが、ここでは制度を視覚化した少ない事例です。

 

──加藤先生はオリンピアがファイナンスとコンストラクションに関するマネジメントを務めた太陽光発電所のプロジェクトでも、行政対応やコンストラクション・マネジメントを担当されました。その業務を通じて印象に残ったことなどがあれば、お聞かせください

この太陽光発電所のプロジェクトをお話しする前に、どうしても触れざるを得ない未曽有の出来事があります。それは、このウェブサイトの冒頭でオリンピアの代表も言及しているように、2011年3月11日に発生した東日本大震災のことです。そして、この大震災による原子力発電所の事故が発生して、日本は将来のエネルギー問題に直面したことです。また、FIT(再生可能エネルギーの買取り制度)という法整備がなされたことも大きかったと思います。つまり、エネルギー供給に関する国民の危機感と、FITという制度が発電施設の実現を後押ししたのです。

オリンピアによる太陽光発電所は、北関東に5箇所建設しました。建設地の特性はそれぞれ異なりますが、耕作放棄地や未整備の山林などが主でした。このような場所は、後継者不足により事業の継続が困難で土地の売却も難しいという、全国共通の問題を孕んでいます。昨今のエネルギー問題とは別に、地方の若者の都市への流出や住民の高齢化など、長い年月をかけて顕在化した問題があります。

このような背景もあってか、太陽光発電所の建設のお話をすると、「エネルギーの地産地消」の実現ということで多くの地権者の方にご賛同いただきました。また、殆どの行政もこの時はすでに再生エネルギーの活用を政策に掲げていましたので、協力的だったと思います。

しかし、このように地方の未利用区域が有効に活用された事例は、全国的にはごく稀です。制度疲労も深刻で、人口構成の変化に現実の制度が追い付いておらず、エネルギー供給やインフラ政策も視野に入れたコンパクトシティの実現など、各省庁が横断的に制度を再構築する必要があると思います。

そして、太陽光発電の現状はといえば、国の買取価格がかなり値下がりしたため、発電事業者も激減しています。また、メーカも太陽光パネルの製作から撤退したり縮小したりしています。

一方で建築の分野に関しては、今年2017年4月から従来よりも厳しい省エネ基準の適合義務や届け出措置が始まりました。現在は延べ面積2,000㎡以上の住宅以外の建物が対象ですが、2020年までを目標に住宅も含めて規制対象は段階的に拡大すると見られています。今後は、建築に違和感なく一体的にデザインできる太陽光パネルなどのニーズも高まるでしょう。

また都市計画レベルのスケールでは、近い将来を見据えてワイヤレスで電気を供給するシステムが研究されていますが、これを実現するには宇宙空間で使用可能な太陽光パネルの高性能化が必須です。もちろん、エネルギー政策は太陽光パネルのみではなく、複合的なシステムから実現されるものですが、太陽光パネルの研究開発は今後も継続されるべきだと考えています。

 

エビデンス重視し施設計画 コストコントロールと設計の深化を

──現在オリンピアはバイオマス発電所の開発をすすめておりますが、この発電所を建設するにあたり、ご自身の専門分野において気になる事や留意されている点について教えてください

発電所の計画地は5ヘクタールあり、発電施設は大別して発電ヤードと燃料ストックヤードから構成されます。

本プロジェクトの蓋然性にとって、資金調達は勿論の事、施設計画に係る法的エビデンスも重要です。関連する法令は多岐に渡りますが、まずは敷地全体、あるいは施設全体の規模や用途に係る巨視的な調査が必要です。複数の省庁に及ぶ法令を包括的に調査するのは、コンサル会社や設計事務所で、今回は弊社が担当しています。調査した関連法令は40種以上に及びますが、計画の阻害要因になる要件はないと認識しています。

ただし、複数の法令が工程上クリティカルに連動する場合があります。例えばAという許可が下りないと、Bという申請ができないということがあります。つまり、Aという許可が遅れると工程全体が遅延するため、行政手続きのタイミングは極めて重要です。

発電所は一般的なビルディングタイプとは異なりますが、現在、電気設備・機械設備・土木等の専門家も関わっており、仕様の細部まで議論が深まってきています。また、燃料ストックヤードの倉庫は、いかに柱の少ない15,000㎡もの大空間を実現するかがテーマの1つですが、技術的な目途は既についています。

直近のテーマはコストコントロールを行いながら、設計内容を深化させて、所定の着工時期にプロジェクトを導いていくことです。

──お話ありがとうございました

2017.09.11)